東北地方太平洋沖地震とインプラント手術
2011-03-11 00:49
南青山インプラントセンター佐藤歯科医院
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国内観測史上最大のマグニチュード9.0という未曾有の巨大地震が大津波を引き起こし、東北地方の太平洋岸を中心に筆舌に尽くし難い甚大な被害をもたらしました。私の親戚(岩手水沢、福島郡山、栃木佐野)の生存無事は確認できましたが、津波の被害に遭われた方々の事を思うとその悲惨な状況を知るにつれ心が張り裂けそうになります。

その後も福島原発の深刻な問題を抱え、世界中が見守る中、依然として予断を許さない厳しい状況が続いておりますが、懸命の復旧作業にあたられている東電の現場の方々や、自衛隊、消防庁の方々の勇気ある行動に敬意を表するとともに、ご健闘とご無事を切に祈るものであります。そして必ず事態は無事終息し、この国が復活すると強く信じています。

東京都港区でも震度5弱を記録し、かつて体験したことのないほど強烈な横揺れが長時間続きました。当院ではちょうどその時インプラント外科手術を行っている最中でしたので、とても大変な思いをしました。All on 4 (オールオンフォー)という4本のインプラントで上部構造を支える術式のために、歯周病で抜歯が必要な上顎の全ての歯の抜歯を行い、凸凹の上顎骨の骨整形をしたあと、3本目と4本目のインプラントを埋入しているまさにその際中に、立っていられないほどの激しい衝撃に襲われました。建物は大きく揺れて、倒壊の危険すら感じ「さすがにこれはヤバいな・・』と一瞬最悪の事態が頭をよぎりました。

しかしながら、インプラントはすでに半分顎骨に刺さっている状態で、骨整形の為に歯肉は大きく開いており、また患者は静脈内鎮静下で強制的にぐっすり眠っている状態だったので『もしこのまま被災でもしてしまったら患者が大変な事になる。逃げる事はできない、何とか終わらせなければ・・・」との強い想いから、その旨をスタッフに伝え、同意を得た上でそのままオペを続行いたしました。

麻酔科医の先生は手術台と無影灯に必死にしがみつき、アシスタントはドレーピングの上から患者が落ちないよう押さえつつ自分も飛ばされないようにつかまり、受付は避難路の確保を行い、そして自分は横揺れに合わせながら何とかインプラント埋入を終える事ができました。その後の激しい余震の中でマルチユニットアバットメント(上部構造とのコネクター)を慎重にインプラントに接続し、きちんと歯肉の緊密縫合を行いました。

しかしこれで全て終わりではありません。このままでは患者が歯抜けの状態で帰らなければなりません。あらかじめ用意しておいた仮義歯を強い余震の中でずれないように慎重に固定し、形態修正等の技工作業を行ったあと(これは自分で行っています)何とか予定どおりにインプラントによる固定性の仮義歯を装着して無事施術を終える事ができました。

施術後も非常に強い余震がしつこいくらい続いておりましたが、その頃やっと患者の目が覚め、まだ朦朧とした意識の中で余震を感じながら「もしかして地震ですか?」と問いかけてきたので、事の詳細をお知らせしました。静脈鎮静薬剤には”健忘効果”があるので、患者は術中のことは何も覚えてなかったのですが、後で事の真相を聞いて大変驚かれておりました。

何とか事なきを得て安堵しておりますが、もし揺れがもっと激しかったり電気がずっと止まっていたり(停電は一瞬でしたので助かりました)あれ以上の状況だったらと考えると正直ぞっとします。そのような非常に過酷で厳しい状況の中、勇気をもって最善のサポートをしてくれた麻酔科医の西條医師と当院スタッフを誇りに思うとともに、心から感謝いたします。

この未曾有の大災害に際して果たして自分に何が出来るかを考えた時、やはり自分に与えられた使命は歯科治療を通しての社会貢献なので、こんな時だからこそ、今は冷静に、東京にどっしりと腰を据えて普段どおりに診療するべきだと考えました。そして有事の時には身元確認のボランティアなど、医療人としての責務を果たす所存です。他に出来る事と言えば「募金」「節電」「車の使用を控える」・・などでしょうか。被災者のためにも今は何事も辛抱の時期だと思います。

被害を受けられた皆様に謹んでお見舞い申し上げるとともに、被災地の一日も早い復旧を心から祈願いたします。

下記は震災当日に施術された All on 4 ケースです。自分にとっても忘れられない手術でしたので掲載させて頂きたいと思います。(患者了承済)
 
      初診時の口腔内         術後の口腔内(インプラント仮歯装着)

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     初診時の口元の状態            術後の口元の状態

 
     初診時のレントゲン写真          術後のレントゲン写真

術後は少し腫れたそうですが想像していたほどではなく、またお痛みもほとんどなかったので鎮痛剤は一錠も飲まずに済んだそうです。震災後に何も問題がなくて良かったです。ちなみに経過は良好で、歯がぐらぐらで何も噛めない状態から一転して、何でも食べられるようになったと大変お喜び頂いております。
健康な歯は生命維持のために必要不可欠な存在であり、日頃からのケアがとても重要だとあらためて考えさせられました。


 
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